黄金に輝く宝船の前で満面の笑顔を浮かべて並び立つ大黒天(打ち出の小槌と米俵)と恵比寿(釣り竿と大鯛)の和風幻想アート(森の灯り)

大黒天と恵比寿の福神習合――厨房の守護神・シヴァ神から日本の漁労神、商売繁盛の二柱へ

「えびす・だいこく」の黄金コンビ――日本人が最も愛した二福神

商家や旧家の神棚、あるいは飲食店の帳場に目をやると、ふくよかな笑顔を浮かべた二柱の神様が仲睦まじく並んで祀られている光景を誰もが目にしたことがあるだろう。右手に釣り竿を持ち脇に立派な鯛を抱えた「恵比寿(えびす)」と、頭巾をかぶり大きな袋を背負って米俵の上に立ち、打ち出の小槌を振り上げる「大黒天(だいこくてん)」。いわゆる「えびす・だいこく」の二福神である。

「七福神」の中でも、この二柱は別格の存在感を誇る。室町時代から江戸時代にかけて、日本人は七福神全体を祀る以前に、まずこの二神をペアにして家庭や仕事場に迎え入れ、日々の繁栄と幸福を祈り続けてきた。

しかし、この二柱の神の出自を深く探っていくと、そこには国境と宗教の壁を軽々と飛び越えた、驚くべき「神仏習合(しんぶつしゅうごう)」のドラマが隠されている。一方はインド・ヒンドゥー教の猛烈な破壊神であり、もう一方は日本古来の海からやってくる漂着神であった。全く異なる起源を持つ二神が、なぜ日本列島で出会い、固い絆で結ばれるに至ったのだろうか。

古代インドの三つ目忿怒の破壊神マハーカーラ(シヴァ神)から平安天台宗の厨房の守護神へと変貌する大黒天のアートインドの暗黒神から寺院の厨房神へ「大黒天のルーツ」(仏教美術イメージ)

インドの暗黒破壊神から厨房の福神へ――大黒天の驚異の変身

大黒天のルーツは、古代インドのヒンドゥー教における最高神の一柱「シヴァ神」の恐るべき暗黒相「マハーカーラ(Mahākāla)」にある。「マハー」は「大」、「カーラ」は「黒」または「時間・死」を意味し、宇宙の終わりにあらゆる存在を破壊し尽くす戦神・冥府の王であった。

このマハーカーラが仏教に取り込まれると、仏法を護持する護法善神となった。唐代の中国を訪れた天台宗の開祖・最澄(伝教大師)らは、密教とともに大黒天の信仰を日本へと伝えた。

日本に上陸した初期の大黒天は、比叡山延暦寺の根本中堂をはじめとする寺院において、「食堂(じきどう)や厨房の守護神」として祀られた。三面六臂(三つの顔と六本の腕)の勇猛な姿で、寺院の食糧が尽きないように見守る実利的な神であった。

そして平安時代末期から中世にかけて、決定的な習合が起こる。「大黒(だいこく)」の音読みが、日本神話の国造りの神「大国主神(おおくにぬしのかみ)」の「大国(だいこく)」と通じることから、両者が完全に同一視されたのである。

大国主神の温厚な福徳性と結びついた結果、大黒天は恐ろしい忿怒相を完全に脱ぎ捨て、福耳に満面の笑みをたたえ、人々に無限の富を打ち出す「打ち出の小槌」と、豊かな穀物を象徴する「米俵」に乗る、お馴染みの親しみ深い福神の姿へと劇的な変身を遂げたのである。

さらに中世には、大黒天・毘沙門天・弁財天の三神が合体した「三面大黒天(さんめんだいこくてん)」という最強の福徳・戦勝の合体神も誕生した。かの豊臣秀吉が終生肌身離さず懐中仏として信仰し、一介の足軽から天下人へと駆け上がった「太閤出世の守護神」として名高い。福徳と武威、知恵と財宝のすべてを併せ呑むこの多面的な神格のダイナミズムこそ、激動の乱世を生き抜いた武将たちをも虜にした大黒天の底知れぬ魅力であった。

古代の荒波寄せる海岸で丸木舟に乗り豊漁をもたらす「寄り神(漂着神)」としての恵比寿神アート海原の彼方から福をもたらす漂着神「えびすの起源」(民俗信仰イメージ)

海原の彼方から来る漂着神――恵比寿の謎と神話の影

大黒天が外来のインド仏教出身であるのに対し、恵比寿は七福神の中で唯一の「日本純国産の神」である。

「えびす」という言葉は、古くは「夷」「戎」「胡」と書き、大和朝廷の支配地から外れた「異邦人」「異界の住人」を意味した。古代の漁民たちにとって、富と災厄をもたらす海原の彼方(常世の国・ニライカナイ)から海岸へと漂着するクジラ、ウミガメ、あるいは水死体や流木などの漂着物は、海神の化身「寄り神(えびす神)」として手厚く祀られた。海岸に流れ着いたものを祀ると大漁になるという信仰が、恵比寿の原点である。

やがて恵比寿は、神道神話の二つの神と習合した。

第一が、イザナギとイザナミの国生みにおいて、不具の子として生まれ葦の舟に乗せて海へ流された悲劇の神「水蛭子(ヒルコ)」である。海を漂流したヒルコが、各地の海岸に流れ着いて福をもたらす神へと転生したという伝承(西宮神社などの起源)が生まれた。

第二が、大国主神の長男であり、釣りを好んだとされる「事代主神(ことしろぬしかみ)」である(美保神社などの起源)。

烏帽子に狩衣をまとい、片手に釣り竿、片手に丸々と太った赤い鯛を抱える恵比寿の姿は、無理な力づくの乱獲を戒め、「清き心で糸を垂れ、必要な恵みをいただく」という日本人の自然観と商業道徳を美しく体現しているのである。

この恵比寿信仰の熱気は、現代の関西を中心とする「十日戎(とおかえびす)」において今なお爆発的な賑わいを見せている。兵庫の西宮神社、大阪の今宮戎神社、京都の京都ゑびす神社などに何十万人もの参拝者が押し寄せ、「商売繁盛、笹持って来い!」の景気の良い掛け声が響き渡る。とりわけ西宮神社で毎年一月十日の早朝に行われる「福男選び(ふくおとこえらび)」は、開門と同時に境内を全力疾走して一番福を目指す民俗行事として全国的に知られている。福は自らの足と手で掴み取るもの――海の荒波に漕ぎ出していった古代漁民の勇気と進取の気象が、この激しい祝祭の中にそのまま受け継がれているのである。

江戸時代の商家の神棚に大黒天と恵比寿の木像が一対で祀られ商人たちが柏手を打って祈る歴史風俗アート江戸商人の町人文化が完成させた「二福神信仰」(江戸風俗イメージ)

親子神にして天地の調和――江戸商人が完成させた二福神信仰

大黒天(大国主神)と恵比寿(事代主神)が「父と子」という神話的血縁関係で結ばれたことにより、室町時代以降、この二柱を同時に祀る「二福神信仰」が庶民の間で決定的なブームとなった。

民俗学的に見れば、大黒天は「山の幸・農耕の富(米俵・大地)」を司り、恵比寿は「海の幸・漁労の富(大鯛・海洋)」を司る。つまり、大黒と恵比寿を並べて祀ることは、日本列島の「天と地」「山と海」「農村と都市」のすべての富と恵みを完璧に網羅・調和させることを意味していたのである。

江戸時代に入ると、貨幣経済が急速に発展した城下町や宿場町において、商売繁盛の絶対神として定着した。毎年十月二十日の「恵比寿講(えびすこう)」では、商人たちが大売出しを行い、大黒・恵比寿の像に鯛や神酒を供えて商売の繁盛を祝った。

決して驕らず、常に笑顔を絶やさず、誠実に商いに励めば、福の神は必ず微笑んでくれる。「笑う門には福来る」という日本人の根底にある幸福論は、この大黒と恵比寿の温かな神仏習合の歴史の中にこそ、最も鮮やかに息づいているのである。

民俗の現場において、大黒天は「台所・竈(かまど)」に、恵比寿は「座敷や店舗の神棚」に祀られることが多い。火と水、食物を司る家庭の根幹を大黒が守り、外界と交流し富を運び込む玄関・商売の場を恵比寿が守る。内を守る神と外から富を招く神――この絶妙な役割分担によって、庶民の生活空間はあらゆる不安や飢餓から守られた聖域となった。神仏の尊像をただ恐れるのではなく、自らの暮らしの同居人として愛し、日々の感謝を捧げるという日本人の温かな信仰のかたちが、ここにある。

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満面の笑みをたたえた福神の慈愛、黄金に輝く宝船の瑞祥、そして日々の暮らしに福を呼び込む清らかな祈り――。日本人が大切に育んできた七福神や神仏の文化には、心を明るく前向きにし、穏やかな豊かさを引き寄せる不思議な力が宿っています。

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・七福神信仰の成立と神仏習合――宝船に乗り合わせた多国籍の神々が江戸の福神へ至る軌跡

参考資料・出典

  • 宮田登『七福神信仰事典』戎光祥出版、1998年
  • 和歌森太郎『神仏習合の民俗学的研究』吉川弘文館、1975年
  • 服部法照『大黒天信仰の成立と展開』法蔵館、2001年
  • 吉井良隆編『えびす神信仰』雄山閣、1986年
  • 山折哲雄『仏教と神道のあいだ』講談社学術文庫、2014年

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